ジャーナル
2025.08.10
(私の気づきとまとめ)

放牧をはじめて、まだ一年にも満たないのですが、
牛たちの姿や日々の仕事の中で、これまで気づかなかったことが見えてきました。
これは、机の上ではわからない“現場でしか掴めない変化”です。
お産が安産になったこと
放牧によって運動量が自然に増え、足腰がしっかりしてきたことが大きな要因です。
以前はお産の途中で介助が必要になることもありましたが、その回数が減り、お産後の疾病も少なくなりました。母牛はすぐに子育てに集中できるようになっています。
栄養面のプラス効果
牧草にはビタミンやベータカロテンが豊富に含まれています。
これらは牛の免疫や体調を支える重要な栄養素です。さらに運動はインスリンの働きを助け、代謝バランスを整える効果があります。こうした相乗効果が健康全体の底上げにつながっていると感じています。
初乳の色と質の変化
放牧前よりも濃い黄色になった初乳は、ベータカロテンが行き渡っている証拠です。
免疫成分や栄養がより豊富になり、子牛が生まれた直後から健康的に育つ基盤を作ってくれます。実際に、子牛の元気さや発育の安定感も増しています。

牛の表情と毛並みの変化
毛に艶が出て、目つきが落ち着き、群れで過ごす時間の中に余裕が見えるようになりました。数字以上に、この姿が放牧の効果を物語っています。
暑さへの対応
真夏の日中は気温が高く、牛にとって大きな負担になります。現在は夜間放牧を中心にしていますが、それでも高温多湿の日は採食量が落ちることがあります。日陰や水場の配置、放牧時間のさらなる調整が必要です。
草の管理
草の生育スピードと放牧ローテーションのバランスを取るのは容易ではありません。
草丈や質に差が出ると、牛が好む場所とそうでない場所がはっきり分かれてしまいます。草を均一に保ち、長期間維持するための種まきや刈り取り、肥培管理の計画づくりが課題です。

放牧をはじめたことで、牛の健康や乳の質、子牛の育ち方にまで良い変化が現れました。
同時に、暑さや草の管理といった改善点も明らかになりました。
これらを一つずつ解決していくことが、放牧を持続可能にするための鍵です。
放牧は、ただ牛を外に出すだけの作業ではありません。
草と牛と土と、人の知恵が巡り合う場所です。
これからの四季を通じて、さらに豊かな景色を育てていきたいと思います。


祖父や父が向き合ってきた農業と、そこに込めた未来への熱量に惹かれ、工学部を中退。
酪農の専門大学を卒業後、船方農場へ。
現在は酪農と情報発信を担当。趣味はカメラ。
農業は、もっとも手ざわりのあるクリエイティブだと思っている。