JOURNAL

ジャーナル

2026.04.05

放牧は「始まった」ではなく、「始めていく」

2026年の放牧が始まりました。

春の空気の中、牛たちが外へ出ていく。
走ったり、跳ねたり、草を食べたり。
毎年見ている風景ですが、やはり少し特別な時間です。

ただ、放牧はこの日から「一日中外に出す」というものではありません。

最初は、短い時間から。

数時間だけ外に出して、また牛舎へ戻す。
その繰り返しから始まります。

なぜ、少しずつ慣らすのか

冬の間、牛たちは牛舎で過ごしています。
餌も、環境も、動き方も、放牧期とは違います。

そこからいきなり長時間の放牧に移ると、
体にも、行動にも負担がかかります。

草の食べ方も変わる。
歩く量も増える。
日差しや気温の影響も受ける。

だから、急がない。

少しずつ、外の時間に体を慣らしていきます。

牛だけでなく、草地も「慣らす」

もう一つ大切なのは、牛だけではありません。

草地も、同じです。

春先の草は、まだ成長の途中です。
ここで一気に食べられてしまうと、
回復が追いつかず、草地が弱ってしまう。

放牧は、牛のためだけのものではありません。
草が育ち続けることが前提にあります。

だから、草の状態を見ながら、
どこに、どれくらいの時間入れるかを決めていきます。

放牧は「自由」ではなく「設計」

外に出すと、牛たちは自由に見えます。

でも実際には、その裏に細かな管理があります。

どの区画を使うのか。
どれくらいの頭数を入れるのか。
どのタイミングで移動させるのか。

放牧は、ただ外に出すことではなく、
草と牛と土のバランスを整える仕事です。

少しずつ、季節が動き出す

最初は数時間だった放牧も、
少しずつ時間が伸びていきます。

草が伸びる。
牛が慣れる。
天気が安定する。

条件が揃ってきたとき、
一日の中で外にいる時間が長くなっていきます。

放牧は、ある日突然完成するものではありません。

季節と一緒に、ゆっくり立ち上がっていくものです。

今年もまた、この土地で

牛が草を食べ、
草が土を守り、
土がまた草を育てる。

その循環の一つの始まりが、放牧です。

今年もまた、この土地で。
少しずつ、いつもの景色が戻ってきます。

書いた人:坂本雄也(さかもと・ゆうや)

祖父や父が向き合ってきた農業と、そこに込めた未来への熱量に惹かれ、工学部を中退。
酪農の専門大学を卒業後、船方農場へ。
現在は酪農と情報発信を担当。趣味はカメラ。
農業は、もっとも手ざわりのあるクリエイティブだと思っている。