ジャーナル
2026.02.01

冬の朝の子牛舎は、静かだ。
息を吐くと白くなるし、ブーツの音が少しだけ響く。
人にとっては寒い。
正直、長居したい場所ではない。
でも子牛たちは、案外けろっとしている。
子牛の平熱は、だいたい 38.5〜39.5℃。
人より少し高い。
この数字を知っていると、
冬の子牛管理の考え方が、少し変わってくる。

冬の子牛管理で、まず気にしているのがミルクの温度だ。
目安にしているのは、
40℃前後。
子牛の体温に近い温度。
人で言えば、
冷えた体に、ちょうどいい温かさの飲み物をゆっくり飲む感じだ。
冬は、ミルクがすぐ冷める。
準備したときは良くても、配り終わる頃には
思った以上に温度が下がっていることがある。
だから冬場は、
「だいたい合ってる」ではなく、
ちゃんとその温度かどうかを毎回確認する。
ただ、数字よりも大事にしているのは感覚だ。
手で触ったときに、
「少し温かくて気持ちいいな」と感じるかどうか。
ぬるいミルクは、一番よくない。
冷たすぎなくても、
体温との差が大きいと、子牛の体には負担になる。

ミルクで本当に見ているのは、
飲んでいる最中より、飲み終わったあとだ。
すっと落ち着くか。
そのまま横になるか。
動きに変な力が入っていないか。
冬は、ミルクの温度が合っていないと、
この反応が分かりやすく出る。
よく飲んだのに、
なんとなく元気がない。
すぐ立ち上がらず、もぞもぞしている。
そういう日は、
「今日のミルク、どうだったかな」と振り返る。

もう一つ大事なのが換気。
寒い季節になると、
つい子牛舎を閉め切りたくなる。
でも、空気が動かない場所は、だんだん重くなる。
湿気がたまり、
呼吸がしづらくなる。
人でも、換気していない部屋に長くいると、
なんとなく頭がぼーっとする。
子牛も、それは同じだ。
船方農場では、冬でも空気を入れ替える。
冷たい風を直接当てないようにしながら、
新しい空気だけを、ゆっくり通す。
空気が変わると、
寝床が乾く。
子牛がよく横になる。
よく眠る。
この流れができている日は、
だいたい調子がいい。
子牛の体温は約39℃。
ミルクは40℃前後。
空気は新鮮で、寝床は乾いている。
特別なことはしていない。
でも、この「当たり前」が崩れると、
冬はすぐに体調に出る。
だから冬の子牛管理は、
何かを増やすより、
基本を外さないことに尽きる。
ミルクはあったかく。
空気は新鮮に。
子牛を見ていると、
それだけでいいんだな、と思う日が多い。

祖父や父が向き合ってきた農業と、そこに込めた未来への熱量に惹かれ、工学部を中退。
酪農の専門大学を卒業後、船方農場へ。
現在は酪農と情報発信を担当。趣味はカメラ。
農業は、もっとも手ざわりのあるクリエイティブだと思っている。